PG-098:Bacilliにおける水銀耐性トランスポゾンの構築と遺伝子の水平伝播
1近畿大学理工学部, 2東北緑化環境保全株式会社, 3東北大学大学院環境科学研究科, 4University of Illinois at Chicago, 5東北学院大学工学部
水俣湾底泥より分離されたBacillus megaterium MB1株が持つTnMERI1,アメリカマサチューセッツ州より分離されたB. cereus RC607株が持つTn5084,ウクライナのカルパティア山脈の土壌より分離されたExiguobacterium sp. TC38-2b株が持つTn5085は,相同性を持ったII型水銀耐性トランスポゾンである.Bacillus属では遺伝子構造の異なる多様な水銀還元酵素遺伝子(merA)が25クラス以上見つかっているが,これまでに見つかっているトランスポゾン構造はTnMERI1様トランスポゾンのみである.このことから環境中には未だ知られていない水銀耐性トランスポゾン構造の存在が予想される.
本研究では,土壌中より芽胞形成水銀耐性細菌を分離し,新規水銀耐性トランスポゾンの探索とその構造解析から,既知のTnMERI1様トランスポゾンの構築過程の解明を試みた.また水銀耐性トランスポゾンを保持している芽胞形成細菌種の特定から,水銀耐性遺伝子の水平伝播現象を評価した.
南極の土壌より分離されたPaenibacillus sp. EOA1株からはTnMER2 (8.5kb)が見つかった.淀川(大阪市)の土壌より分離されたBacillus sp. YR31株からはTndMER3 (3.5kb)が見つかり,TnMER2が持つ水銀耐性遺伝子群の塩基配列と高い類似性(90%以上)を示した.TnMER2とTndMER3の塩基配列の比較解析より,TndMER3のtnpAR遺伝子獲得によってTnMER2が構築されたと考えられた.またTnMERI1様トランスポゾンとTnMER2のtnpAR配列の類似性からは,TnMER2がTnMERI1様トランスポゾンの原型である可能性が示された.
さらに台湾の玉山山頂の土壌からも,本研究にて見つかった新規トランスポゾンであるTnMER2とTndMER3をもったBacillus属細菌がそれぞれ発見された.このことからBacilli間では,細菌の属を越えて遺伝子が水平伝播され,地理的な障壁を越えて同じ水銀耐性トランスポゾンが共有されている事が明らかになった.
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