S32-05 : バイオフィルムの形成抑制を目指した水処理用バイオインターフェイスの機能化
Posted On 20 10月 2014
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1東京農工大学 大学院工学研究院 応用化学部門
バイオフィルムは水処理リアクターの高速化に利用される一方、バイオフィルム由来のろ過膜の目詰まり(バイオファウリング)を引き起こす。淡水の確保が喫緊の課題である今日において、バイオファウリングを抑制可能な材料の開発が重要である。本研究では、バイオファウリング抑制のキーとなるバイオフィルムの生理的機能を抑える水処理用バイオインターフェイスの開発に取り組んだ。材料表面の修飾法としてグラフト重合法を用い、ポリエチレン(PE)製材料(シートおよびろ過膜)にモノマーを積層させてポリマー鎖を形成させた。その後、高親水性のN, N-ジメチル-γ-アミノブチル酸塩を導入し、ろ過膜の透水性を保ち、細菌の初期付着を抑制した。この材料にクオラムセンシング(QS)のシグナル化合物であるアシル化ホモセリンラクトン(AHLs)を分解可能なAcylase Iを固定化した。この酵素を固定化したシートにより、Agrobacterium tumefaciensのバイオフィルム量は元のPEシートの約6分の1に抑制された。Acylase Iを失活させたシートではバイオフィルムの形成が促進され、バイオフィルムの抑制にはQSの遮断が重要であることを示した。次に、ろ過膜孔内の細胞外ポリマーによる目詰まりを抑えるため、多糖分解酵素であるα-Glucosidaseを孔内に、Acylase Iをろ過膜表面に固定化する複合酵素固定化ろ過膜を開発した。このろ過膜によりバイオファウリングが抑制され、元のPE膜に比べ透水性を2.5倍向上させることが可能であった。発表ではバイオフィルムの解析結果や今後の展望についても紹介する。
keywords:Biofilm,Quorum quenching,Surface functionalization,Graft polymerization,Enzyme immobilization