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S32-02 : 微生物による水質劣化を惹起する生分解性有機物の評価と制御
Posted On 20 10月 2014
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1東京大学大学院工学系研究科附属水環境制御研究センター, 2東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻
水の再利用を行う際、多くの場合塩素等による消毒が行われる。消毒は病原性微生物の制御が主目的であるが、非病原性微生物も同時に不活化される。しかし、配水や貯水の過程で消毒効果が薄れると、微生物再増殖が起こる。再増殖した微生物は水中の懸濁物質となり、美観を損ねたり、給配水における障害となる。バイオフィルムが形成すると、病原微生物への消毒効果が低下してしまう。こうした微生物再増殖の問題は再生水のみならず、水道水においても共通の課題である。
微生物再増殖は消毒効果の低減に加え、微生物の増殖因子が水中に残留していることにより起こる。なかでも生分解性有機物(Biodegradable Organic Matter, BOM)が主要な増殖基質である。そこで我々は、微生物再増殖の制御を目的とし、再生水や水道水におけるBOMの評価に関する研究を進めている。まず、再生水におけるBOMの組成を評価する手法として、Bacterial Growth Fingerprint, BGF法を開発した。BGF法では、再生水等から分離した有機物利用パターンの異なる菌株9株を試料に植種することで、各菌株の増殖量からBOM組成を評価できる。また、質量精度の極めて高いフーリエ変換質量分析計(FTMS)を用いて、微生物再増殖前後の有機物を分析することで、微生物再増殖に用いられたBOM化合物の特定を行っている。さらにFTMS分析によりBGF菌株が利用できる有機物の特定を行うなど、BOMを網羅的に解析する取り組みを行っている。見方を変えれば、meta-substrate-ome技術ともいえる挑戦である。
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