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S31-01 : 土壌の健全性評価:米国のイチゴ有機栽培の現場から
Posted On 20 10月 2014
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カリフォルニア大学サンタクルーズ校環境学科
米国カリフォルニア州サンタクルーズ郡は、有機農地率が20%を超える有機イチゴ・野菜栽培の先進地であるが、一部のイチゴ圃場で輪作にも拘わらず土壌病害が発生している。一方、当地の慣行イチゴ栽培では、くん蒸剤への規制強化を背景に、土壌くん蒸に依存しない生産技術が模索されており、土壌の健全性(Soil health)が強調されている。本報では、著者らのカリフォルニアの有機および慣行イチゴ栽培における土壌還元殺菌法の最適化に関する研究(2003-)と、米国における土壌の健全性に関連した動向について話題提供し、今後の土壌微生物研究への期待を述べる。
筆者らは、これまでに土壌還元殺菌法により土壌中のVerticillium dahliae微小菌核を80-100%減少させ、くん蒸剤処理区と同等のイチゴ収量が得られることを実証した。その結果、13年度には州内計170haの農地で同法が実践されている。しかし、Fusarium oxysporum、Macrophomina phaseolinaによる病害には安定した防除効果が得られておらず、養分動態などとともに研究を継続している。
土壌の健全性は「植物、動物、人間を支える生きた生態系として機能する土壌の継続的能力」(USDA-NRCS)と定義され、研究、教育、普及等目的に応じた評価法が開発されている。
ミレニアム生態系評価(2005)を機に、土壌の生態系サービスへの認識が高まっているが、土壌生態系の構造と機能の関係については未知の部分が多く、分子生物学的手法、長期圃場試験、有機栽培圃場などを利用した今後の研究の進展が期待される。
keywords:Soil health,有機農業,土壌病害管理,土壌肥沃度管理,土壌還元殺菌法