S12-04 : 昆虫と土壌微生物の共生:農業害虫カメムシ-土壌間の殺虫剤分解菌の動態解明
Posted On 20 10月 2014
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産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門
ダイズ害虫のホソヘリカメムシは、毎世代環境土壌中からBurkholderia属の共生細菌を獲得し腸内に保持することが知られている。近年、殺虫剤分解活性のあるBurkholderiaをホソヘリカメムシに経口摂取すると、その腸内に共生し宿主を殺虫剤抵抗性にしてしまうことを発見した。自然環境中では、殺虫剤散布によって土壌中の分解菌が増殖しカメムシに感染すると考えられるが、実際どのような感染動態が見られるのかはほとんど分かっていない。そこで本研究では、殺虫剤を散布した土壌で カメムシを飼育し、殺虫剤散布による土壌微生物群集と、カメムシに感染した殺虫剤分解菌の動態を比較解析し、カメムシ-土壌間の殺虫剤分解菌の動態解明を試みた。
殺虫剤散布後経時的に土壌およびカメムシ腸内の微生物叢を培養法により調べたところ、殺虫剤の散布回数が増えるにつれて土壌中の分解菌数や分解菌に感染した虫の割合が増えたが、土壌やカメムシから単離された分解菌のほとんどはBurkholderia属細菌であった。また、土壌中の16S rRNA遺伝子を網羅的に解析したところ、土壌細菌叢全体におけるBurkholderia属細菌の割合は僅か0.03%であった。さらに、土壌で優占するBurkholderiaとカメムシに感染したBurkholderiaの系統を比較解析したところ、土壌中で優占度が最も高い系統ではなく、カメムシはある特定の系統のBurkholderiaにしか感染しないことが明らかとなった。これらの結果は、害虫には土壌中のわずかな殺虫剤分解Burkholderiaを取込む極めて強い選択性があることを示している。
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