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S11-03 : 高速原子間力顕微鏡(高速AFM)で「みる」バクテリアの細胞表層
Posted On 20 10月 2014
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1金沢大学理工研究域, 2金沢大学理工研究域バイオAFM先端研究センター, 3慶應義塾大学医学部薬理学教室(日本学術振興会 特別研究員 PD)
原子間力顕微鏡(AFM)は、基板に固定した試料の表面をナノサイズの探針でなぞり、試料の構造を可視化する。緩衝液などの溶液中で観察を行うことができるため、生理的条件下での生体分子の観察に用いられている。金沢大学の安藤教授らが開発した高速AFMは、探針の走査速度を飛躍的に向上させることで、生体分子の構造とその動態を高い空間時間分解能で観察できる。本研究では、高速AFMを用いて生きた細菌の表層構造を観察し、これまで静止画像でのみ観察されてきた細胞表層構造とダイナミクスをナノオーダーの解像度でとらえた。 観察試料として、磁性細菌Magnetospirillum magneticum AMB-1、光合成細菌Rhodobacter shaeroides、E. coliの3種類のプロテオバクテリア門に属する細菌を用いた。細胞をポリ-L-リジンとグルタルアルデヒドで処理したマイカ基板に固定した。基板上での細胞の生存は、生・死二重蛍光染色キットにより確認した。液体培地中で細胞表層をAFM観察したところ、細胞表層は網目状の構造により被われていた。網目状構造の直径は約7 nm、深さは約1 nmで、観察した3種類の細菌でほぼ等しい大きさであったことから、この構造がプロテオバクテリア門に保存されていることが示唆された。精製外膜を用いてAFM探針による微解剖実験を行ない、網目状構造の構成分子を調べたところ、ポーリン分子により構成されてことが明らかになった。また、網目状構造の動態を観察した結果、細胞表面をランダムに移動していた。高速AFMにより細胞表層に観察されたその他の構造についても紹介する。
keywords:生細胞イメージング,AFM,外膜構造,ポーリン