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O22-08 : 時系列メタゲノミクスでみる西部北太平洋の微生物群集代謝機能
Posted On 20 10月 2014
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1東大・大気海洋研, 2JAMSTEC, 3国立遺伝研
西部北太平洋海域は,世界でも有数の漁場であり,活発な生物ポンプ作用による二酸化炭素吸収海域でもある.本研究では,西部北太平洋の亜寒帯(K2:47N, 160E)及び亜熱帯(S1:30N, 145E)海域に設置された時系列観測点において,微生物群集代謝機能の網羅的解析を行い,この海域の物質循環と生態系を理解するための最も基本的かつ重要な情報を得ることを目的とした.2010~2011年4回の「みらい」航海にて表層海水を採取,DNAを抽出し454パイロシーケンス法によって塩基配列を決定した.全8試料(4航海x2観測点)で約480万リードの配列情報を得て遺伝子予測とKEGG オーソログ解析を行った.さらに,KEGGモジュール解析システムMetabolic And Physiological potentiaL Evaluator (MAPLE)を用いて,KEGGモジュールで定義された各種の遺伝子セットの充足率と由来微生物種を調べた.その結果,糖や脂質代謝といった基本的なモジュールは季節や海域による大きな充足率の変動は見られなかったが,膜輸送系や二成分制御系のような環境応答に関わるモジュールについては大きな変動が見られた.発表では特徴的なモジュールの変動と構成する微生物分類群について示す.本研究により,西部北太平洋における微生物群集の変動が,どのような微生物機能の変動に反映されているかが初めて示された.同時に,KEGGモジュール充足率を指標とした時系列解析が,生態学的に重要な機能を推定し微生物群集構造と生態系機能との関係を理解するための強力なツールとなることが示された.
keywords:メタゲノミクス,西部北太平洋,代謝機能,群集構造,KEGGモジュール