O12-01 : 土壌環境下における放線菌キチナーゼ遺伝子群と抗生物質生産関連遺伝子群の発現誘導
Posted On 20 10月 2014
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1農環研, 2静岡理工大・理工・物質生命
代表的な土壌細菌である放線菌は、自然界における生存競争に打ち勝つため、他の生物が利用しにくい高分子基質を分解する酵素群を分泌する一方で、他の微生物の生育を抑える抗生物質を生産すると考えられる。Streptomyces属細菌は、土壌における主要なキチン分解菌であるとともに抗生物質生産菌としても有名であるが、土壌環境下におけるこれら代謝関連遺伝子群の詳細な制御に関しては明らかにされておらず興味が持たれる。
滅菌土壌で生育させたS. coelicolorの9つのキチナーゼ遺伝子の発現は液体培養時と同様にキチンの添加によって誘導され、そのうちの5つのキチナーゼ遺伝子の発現レベルは、液体培養環境下よりも有意に高かった。特に、これまで酵素として確認されていなかったchiHは、滅菌土壌で最も高い発現を示した。このように、土壌環境下特異的なキチナーゼ発現パターンが観察されたことから、土壌中で生育しているS. coelicolorからRNAを抽出し、マイクロアレイを用いてゲノム遺伝子網羅的にキチン存在下と非存在下で各遺伝子の発現量を比較した。その結果、S. coelicolor A3(2)では、土壌環境下キチンの添加によって、キチナーゼ遺伝子群をはじめとする主要一次代謝遺伝子群のみならずゲノム上にコードされている複数の抗生物質生産関連遺伝子群もその発現が誘導されることが明らかとなった。また、これらキチナーゼ遺伝子群や抗生物質生産関連遺伝子群の発現には、N-アセチルグルコサミンの代謝調節蛋白質の遺伝子として見いだされていた転写制御因子dasRが関与していることが明らかになった。
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