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O11-07 : 施肥管理の異なる畑土壌の酵素活性と酵素産生遺伝子を標的とした PCR-DGGEによる微生物群集構造解析
Posted On 20 10月 2014
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1信州大・理, 2長野野菜花卉試, 3東大・院・農学生命, 4中央農総研セ
土壌中の炭素・窒素・リンの利用性と、それらを獲得するために微生物が分泌する酵素の活性、微生物群集構造との関係を明らかにすることは、土壌中の栄養循環を理解する上で重要である。しかし現在まで、これらの関係については十分に理解されていない。本研究では、肥培管理の異なる畑土壌を対象に、分子生態学的手法を用いてその関係を調査した。 長野県野菜花卉試験場の長期連用圃場14区から採取した黒ボク土を実験に供した。土壌中のβ-D-グルコシダーゼ、プロテアーゼ、アルカリおよび酸性ホスファターゼ活性を測定し、それらの比を取ることで、微生物への各栄養素の相対的な利用性を評価した。また、16S rDNA、18S rDNA、グルコシダーゼ遺伝子、プロテアーゼ遺伝子、アルカリホスファターゼ遺伝子を標的としたPCR-DGGE法により、微生物群集構造解析を行った。 リン施肥の少ない区において、β-D-グルコシダーゼ活性に対するアルカリホスファターゼ活性の比は高い値をとり、微生物がホスファターゼ生産に優先的に資源を配分している可能性が示された。β-D-グルコシダーゼ活性に対するプロテアーゼ活性の比は、堆肥施与区で高い傾向がみられた。PCR-DGGEプロファイルに基づくクラスター解析では,細菌及び糸状菌群集構造は、肥培管理と明瞭な関係を示さなかった。プロテアーゼ及びアルカリホスファターゼ産生細菌群集の構造は、リン施肥が無い、或いは、極端に少ない区間で似通っていた。これらの結果より、肥培管理は、微生物群集の各栄養素獲得酵素生産への資源配分だけでなく、酵素産生に関わる微生物群集構造にも影響を与えることが推察された。
keywords:土壌酵素,PCR-DGGE,ホスファターゼ,資源配分モデル,