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O11-04 : 保全型農地の土壌微生物群集の決定機構
Posted On 20 10月 2014
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1横国大・院・環境情報
不耕起栽培や、化学合成物質の不使用など、慣行農法から保全型農法への転換が世界レベルで進行している。土壌管理の変更にともなって、土壌に対する攪乱や土壌生物にとっての資源状態の変化が起こる。慣行と不耕起・草生(雑草を地上部刈り取りで管理)栽培を比較している圃場における土壌微生物群集を、土壌の化学性、物理性および、他の土壌生物とともに調べた。群集構造の違いを、物理的攪乱(年2回の耕起)、化学的攪乱(年2回の有機肥料施肥)、および土壌構造の変化との関係において捉えた。慣行区では、時間の経過とともに土壌炭素量が減少したのに対し、不耕起草生区では増加した。これは、炭素濃度の高い耐水性団粒が増加したためであった。耕起によってミミズの個体数はほぼゼロになり、耕起直前の耕起区は土壌空隙が不耕起草生区より少なく、土壌小型節足動物の密度を低くしていた。耕起によって糸状菌と細菌のバイオマスが有意に減少したが、施肥の効果は認められなかった。PLFA組成は、耕起区では施肥の影響がなく、不耕起草生区では、施肥区と無施肥区に違いが見られた。土壌の団粒(>2mm)とカビのPLFAは耕起区と不耕起区とで傾向が異なり、耕起区では両者に相関が認められなかったが、不耕起区では正の相関があった。一方、根のバイオマスとカビPLFAには処理にかかわらず正の相関があった。自然草原に近い不耕起・草生の土壌を耕起することにより、カビが優占するシステムから細菌が優占するシステムへ移行した。これは、資源としての根と生息場所としての団粒を耕起が大きく攪乱し、根や団粒と微生物の間にある関係を破壊することによって起きることがわかった。
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