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O11-03 : 土壌における微生物コミュニティの形成過程について
Posted On 20 10月 2014
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1東北大・院・生命, 2東工大・院・生命理工, 3京大・院・医
ある環境の菌叢が「その環境において、どこまで必然的に/偶然的に形成されたコミュニティなのか」という問いは、環境メタゲノミクスにおける根本的な問題の一つである。本研究では、土壌から抽出した微生物コミュニティを滅菌した閉鎖系土壌に移植し、一年間菌叢をモニタリングした。並列サンプルの比較により、菌叢のタネと環境が同じであるならば、その定着過程や極相がどれほど似通うのかを調べた。16S rRNA遺伝子ampliconシーケンスの結果、移植直後にProteobacteriaによる一時的な優占が起きたものの、336日後にはAcidobacteria、Verrucomicrobia等の由来土壌で優占していたグループが増加し、菌叢はPhylumレベルで見れば回復傾向を示した。しかし97% OTUレベルでは、由来土壌とは異なるOTUで菌叢が再構成されていることがわかった。また、並列的に336日間培養した3サンプル間の比較では、見つかったOTUのうち1/3が各サンプルに固有、2/3がサンプル間で共通していた。これら固有・共通して見られたOTUが、どのようなランク(存在割合の順位)なのかを調べた結果、固有OTUは下位ランクに限られており、サンプルに固有なOTUがそのサンプル内で優占種になることはなかった。一方、共通OTUはランクトップから最下位まで全域にわたって分布しており、そのランクのバラツキを変動係数は、比較的小さいと思われる0.3以下の変動が7割を占めた。これらの結果より、移植一年後に再構成された菌叢構造は、由来土壌とは異なるものの、ある程度の必然性をもって形成されたと考えられる。
keywords:土壌,菌叢,遷移,,