電流生成微生物の電位認識と遺伝子発現制御機構
Posted On 06 10月 2015
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高妻篤史(東京薬科大学 生命科学部)
微生物電気化学システム(BES)は電極電位の制御によって微生物・電極間の電流量とその方向をコントロールすることができるシステムであり、微生物細胞内の有機物代謝により生じた電子を電極によって回収する装置(微生物燃料電池)や、細胞内への電子供給によって有機物合成を促すシステム(微生物電気合成)などへの応用が可能である。BESにおいて電極電位を変化させると、短期的には単純に物理化学法則に従って電流量が変化するが長期的には、微生物の代謝応答(遺伝子発現と代謝活性の変化)を伴って電流量が変化していくと考えられる。しかし微生物がどのように電極電位を認識し、代謝活性を変化させるのかについては不明な点が多い。
我々は電流生産細菌Shewanella oneidensis MR-1株を研究対象とし、本株が電位変化に応答して遺伝子発現や代謝プロファイルを変化させることを明らかにしてきた。本講演ではMR-1株の電位認識と電流生成に関与する分子機構について、最近の研究成果を交えて紹介する。