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O31-07 : 環境中におけるラン藻Microcystis aeruginosaのCRISPRに基づく個体群解析
Posted On 20 10月 2014
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1京大院・農
【目的】有毒ラン藻Microcystis aeruginosaは各地の湖沼でアオコを形成する。本種はゲノム上の耐性機構であるCRISPRに外来因子由来配列(スペーサー)を記録している。環境中において、本種はスペーサー組成が異なる複数の個体群(CRISPR type: CT)で構成されている。先行研究より、出現頻度の高いCTが外来因子と相互作用して新規スペーサーを獲得し、CRISPRを急速に多様化させると推測された。本研究ではこの仮説を検証するために、本種のCRISPRに基づく個体群解析を行った。
【方法】2013年6~10月の1か月毎に京都市広沢池の表層水を採取し、DNAを抽出した。得られたDNAに対しCRISPRを標的としたPCRを行い、増幅産物のCTを決定した。最も多いCTの出現頻度を定量的PCR法により調べた。
【結果・考察】得られた105クローンは13のCTに分類され、そのうちCT19が36クローンと最も多くを占めた。これを裏付けるようにCT19は定量的PCRにより最大3.9×105 コピー/mLの出現頻度で検出された。しかし、最もCT19の頻度が高い時期にも新規スペーサーを獲得した個体は検出されなかった。これは本種個体群の選択的な淘汰(selective sweep)が起こらず、新たな耐性獲得株の相対的な出現頻度が低く維持されていることを示唆している。今後は環境中のCT19のCRISPRのより網羅的な解析と、複数のCT19分離株の比較ゲノム解析を予定している。本研究は科研費基盤B(課題番号26281031)による助成のもと行われた。
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