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O31-06 : 深海底熱水活動域に生息する無脊椎動物の血リンパ中 レクチンの探索と性状解析
Posted On 20 10月 2014
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1京大院・農, 2海洋機構 深海・地殻内生物圏, 3北大院・水産
深海底熱水活動域は、暗黒かつ高圧の極限環境でありながら豊かな生態系を育んでいる。現場に生息するほぼ全ての無脊椎動物は、熱水中の無機物をエネルギー源とする化学合成細菌の中から特定の細菌を選抜し、それらと共生関係を築くことで栄養を獲得している。深海の固有無脊椎動物ゴエモンコシオリエビも、腹部に密生する剛毛に特異な形態・系統の付着共生細菌を有しており、剛毛上で増殖した細菌を摂餌するような行動が観察されている。しかし、深海におけるホスト-細菌の特異的な相互認識・相互作用を可能とする分子機構は未解明である。近年、モデル共生系(マメ科植物やサンゴ)の研究から、ホストによる共生微生物の獲得・維持にレクチンと呼ばれる糖結合タンパク質が必須であることが明らかとなってきた。 本研究は深海底熱水活動域のホスト-細菌の相互認識・相互作用を担いうる分子としてレクチンに着目し、未だほとんど研究例のない深海性無脊椎動物のレクチンを探索、その性状解析から、異種生物間相互認識・相互作用機構を分子レベルで理解することを目指している。これまでの研究において、血球凝集反応試験および糖添加による凝集反応阻害試験により、ゴエモンコシオリエビ血リンパ中にレクチンの存在を明らかにした。その活性はpH6.5-8.0で認められ、100°Cで30分加熱しても残存した。血リンパを腹部剛毛付着共生細菌(培養不可)や系統的に異なる培養微生物と混合した結果、血リンパ成分が剛毛付着共生細菌に結合することが明らかとなった。このことから、ゴエモンコシオリエビ血リンパ中成分が共生細菌の獲得・維持または生体防御に重要な機能を有すると考えられる。
keywords:深海底熱水活動域,異種生物間相互作用,タンパク質,,