P19-12 : メタン生成ベンゼン分解集積培養系におけるトルエン,フェノール,安息香酸の分解微生物
Posted On 20 10月 2014
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1金沢大・理工・自然システム学, 2東大院・工・附属水環境制御研究セ, 3東大院・工・都市工
メタン生成条件におけるベンゼン分解では未だ分解微生物の純粋分離例はなく,集積培養系による分解に留まっている.ベンゼン分解集積培養系における他の単環芳香族化合物の分解も報告されているが,これがベンゼン分解微生物によるものであるかは明らかにされていない.本研究では約4年間ベンゼンを唯一の炭素源として集積したメタン生成ベンゼン分解培養系を対象とし,ベンゼン,およびトルエン,フェノール,安息香酸の分解微生物を安定同位体プローブ(SIP)法により解析した.
用いたすべての単環芳香族化合物の分解が確認された.標識化合物を取り込んだ画分の16S rRNA遺伝子配列を解析したところ,各物質で最も多く得られたクローンは系統学的に大きく異なり,ベンゼンを除き既報の分解菌に近縁であった.ベンゼンについては,我々が別の土壌から集積した培養系においてSIP法で同定したHasda-A (Sakai et al., 2009; Noguchi et al., 2014) に極めて近縁であった.Hasda-A近縁の菌はベンゼンを基質とした系以外では検出されず,トルエン,フェノールおよび安息香酸を経由したベンゼン分解をしていない可能性が示された.一方で,Coriobacteriaceae 科のクローンがベンゼンと安息香酸双方の資化菌として少数検出された.本菌は安息香酸経由でベンゼンを分解できる菌である可能性が高い.また,ベンゼン以外を基質とした系で最も多く検出された微生物はベンゼンを基質とした場合には検出されず,これらの微生物は本集積培養系においてベンゼンの分解産物を基質とすることで潜在していることが示唆された.
keywords:ベンゼン,メタン生成,安定同位体プローブ (SIP) 法,集積培養系,単環芳香族化合物分解菌