P17-09 : メタン生成補酵素F430の超高感度定量分析法:環境中のメタン生成および嫌気的メタン酸化ポテンシャルへの応用
Posted On 20 10月 2014
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1海洋研究開発機構, 2静岡大・理・地球科学
メタン生成は海底下など,還元的な堆積物中における主要な代謝経路の1つであるため,地球表層の炭素循環および,地下生命圏の広がりを理解する上で重要なプロセスである。しかしながら,メタン生成アーキアの分布および活動の理解は断片的にしか進んでいない。特に,海底堆積物深部では,地上との大きな環境落差,複雑な夾雑物成分,低いバイオマスと活性などにより,メタン生成アーキアの定量化は極めて困難である。 そこで,我々は新しい方法論として,メタン生成補酵素F430の超高感度定量分析法を開発した。F430はメチルコエンザイムMレダクターゼの活性部位であり,メタン生成経路の最終段階を触媒する、全てのメタン生成アーキアに共通な補酵素であるため,その分布からメタン生成アーキアの分布や活性を理解できる可能性がある。海底下ではメタン生成アーキアのバイオマスは非常に小さいと考えられるが,開発したLC-MS/MSによる分析法を用いれば,0.1 fmolでのF430の定量が可能である。これは菌数にして600から10000細胞のメタン生成アーキアに相当する。 開発した手法を下北半島沖で採取された堆積物コアに応用したところ,堆積物下200 mまでの範囲でF430の検出に成功し,7-530 fmol/g-sedimentで存在していた。特に,70 m付近ではその周辺の10倍程度高濃度に存在しており,この付近でメタン生成アーキアの分布,あるいは活動に極大があると考えられる。また,本手法は海洋堆積物以外にも様々な環境サンプルに応用可能であり,本発表では水田土壌,微生物マット,地下水への応用例も紹介する予定である。
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