P12-02 : Bacillus pumilus TM-Rが生産する揮発性抗菌物質を利用したミカン汚損果予防:自然界での新たな相互作用因子の可能性
Posted On 20 10月 2014
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1佐大・農, 2佐賀県上場営農セ
Bacillus pumilus TM-Rは揮発性抗菌物質を生産し、物理的に離れた場所に存在する糸状菌の発育を抑制する作用(遠隔抗菌活性)を持っている。一方、保管・流通時のミカン果実表面に糸状菌が感染し、商品価値を著しく低下させる‘すす斑病’が問題になっている。被害は夏季に収穫されるハウスミカンで深刻で、その予防技術が強く求められている。本研究では、本菌が持つ遠隔抗菌活性をミカンの汚損果予防に応用できるか検討した。カンキツすす斑病菌Cladosporium cladosporioides SK-3及びEK-3をそれぞれ接種したPDA培地のいずれかを12 L容のプラスチック製密閉容器に入れ、これにTM-Rを接種したNA培地1枚を入れて密封し、30℃で5日間静置した。TM-R未接種のNA培地を入れた対照区と比べ、これら2株のC. cladosporioidesに対する完全な生育抑制効果が示された。C. cladosporioides SK-3の胞子懸濁液をミカン果実表面にスポット接種し(径約3 mm)、TM-Rを接種したNA培地1枚と、接種果実2個を1.9 L容のプラスチック製密閉容器に入れ、30℃で7日間静置した。TM-R未接種の対照区では3日後までに菌糸の発育がみられたが、処理区では認められなかった。また、7日後においても明瞭な菌糸生育抑制効果が確認された。以上の結果から、本菌をミカンの汚損果予防に利用できる可能性が示唆された。遠隔抗菌活性は対峙培養やMIC試験では検出できず、従来ほとんど注目されていなかったが、自然界における微生物間の新しい相互作用因子としての可能性がある。
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