S14-05 : 細胞外電子伝達の生態学的意義とは? -導電性鉱物と電子をやりとりする微生物-
Posted On 20 10月 2014
Comment: Off
1産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門, 2東京大学 先端科学技術センター, 3北海道大学 農学研究院
細胞外電子伝達は呼吸の電子受容体・供与体として固体物質を利用可能な微生物がもつ分子機構である。近年、微生物の細胞外電子伝達を利用したエネルギー変換、物質生産、環境浄化に関する研究が盛んにおこなわれている。ではこれらの微生物は自然界ではどのように生きているのであろう? 細胞外電子伝達の生態学的意義とは何なのであろうか? その答えの一つとなるのが、自然界に豊富に存在する導電性物質である鉄鉱物と微生物との電子授受反応である。我々のグループは、電流産生能を持つShewanellaやGeobacterがヘマタイトやマグネタイトなどの(半)導体性酸化鉄粒子と電子授受をおこなうことで鉱物-微生物からなる導電性ネットワークが形成され、長距離電子伝達、ひいては電流産生の増大が可能になることを明らかにした。また電流産生菌Geobacterと電流消費菌Thiobacillusからなるモデル共生系を構築し、両者単独では生育ができない、酢酸と硝酸を唯一の電子供与体・受容体とした条件で培養をおこない、導電性酸化鉄の存在下でのみ酢酸酸化と硝酸還元が起こりうることを示した。この結果は導電性酸化鉄を流れる電流が両微生物の代謝を電気的につなぎ、共生関係を成立させていることを意味する。このような電流を介した共生関係(電気共生)は、有機物からのメタン生成を含む、様々な微生物共生反応に適用可能であることも我々は示している。微生物と導電性鉱物との電子授受反応は地球規模の物質・エネルギー循環に多大な影響を及ぼしている可能性を持つのみならず、微生物共生反応の高効率化を通したバイオテクノロジーへの応用も期待できる。
keywords:微生物,細胞外電子伝達,導電性鉱物,電気共生,メタン生成