S14-03 : 生体親和性電子伝達ポリマーによる微生物代謝の電気化学制御
Posted On 20 10月 2014
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1東京大学大学院工学系研究科
近年、生体が有する高度な物質・エネルギー変換機能に着目し、生細胞を電極触媒として捉えた新しい電気―化学エネルギー変換システムに関する研究が活発化している。生細胞が電極触媒として機能するためには、細胞内と細胞外電極間の電子移動、すなわち細胞外電子移動(Extracellular electron transfer, EET)が必須のプロセスである。一般の微生物においてEET経路を構築するためには、細胞膜を透過する電子伝達メディエーターが必要となる。従来から、ビタミンK3などの脂溶性分子がメディエーターとして使用されてきたが、こうした分子は細胞膜傷害性や細胞毒性を示し、生体親和性に欠けるといった問題を抱えていた。そこで、本研究では、リン脂質中のホスホリルコリン基を骨格として含む両親媒性リン脂質ポリマーに着目した。このポリマーは細胞膜を単純拡散で透過し、かつ細胞毒性および細胞膜傷害性が低いという性質をもつ。我々の研究グループでは、このポリマーに酸化還元活性部位としてフェロセンが導入された両親媒性リン脂質ポリマーを新規合成し、これを生体親和性を有する細胞膜透過型電子メディエーターとして機能させた。本講演では、この電子伝達ポリマーを介したEETと、その活用実例として、Ralstonia eutropha H16によるポリヒドロキシ酪酸の生産性向上、およびシアノバクテリアSynechococcus elongates PCC7942の示す概日リズムの制御に関して報告する。
keywords:電気化学,代謝制御,細胞外電子移動,,