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O12-12 : 嫌気性水素酸化好熱細菌Thermosulfidibacterの可逆的TCA回路
Posted On 20 10月 2014
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1海洋研究開発機構, 2製品評価技術基盤機構, 3京大・工
TCA回路は好気性菌の代表的な炭素代謝経路であるが、アナプロレティック経路を含む分岐型TCA経路は嫌気性従属栄養細菌にも存在する。また、最も始原的な炭素固定経路の一つとされる還元的TCA回路も、好気・嫌気を問わず多様な独立栄養系統群に存在することが近年明らかにされている。 Thermosulfidibacterは始原的バクテリア系統の一つであり、独立栄養及び混合栄養で増殖する嫌気性水素酸化硫黄還元菌である。今回我々は、ゲノム解析、メタボローム解析及び酵素活性測定を行い、増殖基質により回転方向が変化する可逆的なTCA回路の存在を明らかにした。これまでの解析結果は、本菌が独立栄養条件下でATP citrate lyaseやその代替経路を欠くにもかかわらず還元的TCA回路により炭素固定を行なうこと、また、acetateを基質とする場合、嫌気性従属栄養細菌型の分岐型TCA経路を、succinateを基質とする場合、succinateを分岐点とする分岐型TCA経路を用いることを示す。本研究の結果は、ATP citrate lyaseは還元型TCA回路に不可欠な要素ではないこと、充分な還元力さえ存在すれば、吸エルゴン反応であるcitrate synthase反応を乗り越えて還元型TCA回路が成立し、炭素固定経路として機能し得ることを示すものである。
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