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O31-04 : 微生物の多様性と生態系機能の関係性評価に向けて:データベースと実験生態系を用いた理論的アプローチ
Posted On 20 10月 2014
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1近畿大・理工, 2国立台湾大・海洋研, 3愛媛大・沿岸研セ
生物多様性の減少が、生態系機能の低下を通じて人間の社会活動に負の影響を及ぼす可能性が示唆されて久しい。生物多様性と生態系機能の関係性については、これまで概念的な説明が多くなされてきた。しかしカルタヘナ議定書など、生物多様性への影響を規制対象とする取り決めでは、科学的根拠に基づいて生物多様性を定量的に評価できる指標が必要となってくる。そこで本研究では、微生物ゲノム比較解析データベース(MBGD)より全ゲノム情報が既知の微生物種を複数種(10~478種)集めて擬似的な微生物群集を構築した。そして群集中のオーソログの多様性を生態系の多機能性の指標として用いることによって微生物群集内の「生物種の多様性」と「生態系機能」の関係を数式化し、作為的あるいは無作為的な群集を用いたシミュレーションより両者の関係性を数値化した。
このような理論的解析より、微生物群集における生態系機能の減少を5%以下に留めたいならば、微生物群集における生物種の多様性の減少を6.6%から8.9%以内に収める必要があるとの結論が導かれた。また、野外の池より分離した細菌20株を用いて生物種の減少と生態系機能(炭素基質利用形態)の減少の関係性を実験的に評価した結果においても、本理論的解析の推定値の確からしさが支持された。これらの結果は、微生物群集における生物多様性の減少が、生態系機能の損失に無視できない影響を及ぼす可能性を示唆している。
※Miki, Yokokawa, Matsui (2014) Proc. R. Soc. B 281: 20132498.
keywords:生物多様性,生態系機能,影響評価,種の減少,オーソログの多様性