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O29-03 : マメ科根粒菌の起源:β-からα-プロテオバクテリアへの根粒形成遺伝子群nodIJの水平伝播
Posted On 20 10月 2014
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1東大・院・総合文化・広域科学, 2東大院・理・生物科学
共生窒素固定に必須な根粒菌はαおよびβプロテオバクテリアに知られているが、その起源は今まで、農作物のマメ科植物の多くに着生するαプロテオバクテリアと考えられてきた。また根粒形成(nod)遺伝子群は分子遺伝学的に発見されたものの、その起源と共生機能獲得に至る分子進化については、ほどんど解析されて来なかった。我々はまず比較ゲノム解析により、根粒形成起源についての情報をもちうる遺伝子を計算推定したところ、nod遺伝子群と窒素固定遺伝子群の一部が、根粒菌全遺伝子の中から候補として挙った。精密な分子系統解析によりこの内、ほぼ全ての根粒菌の持つ共通nod遺伝子群の一部であるnodI, nodJ遺伝子群の起源が、βプロテオバクテリアのATPase/permeaseハウスキーピング遺伝子の遺伝子重複にあることが示された。また根粒菌の起源それ自体についても再考が必要であり、nodABCDSHU7遺伝子の系統解析、そしてマメ科植物-根粒菌の共種分化解析の結果も、nodIJより推定された根粒菌のβプロテオバクテリア起源の仮説と矛盾しないことが分った。nodIJ遺伝子群の分子進化解析より、遺伝子重複後の根粒形成遺伝子にはハウスキーピング遺伝子にない分子進化加速が引き起こされていることが示された。最尤法による検定はこの進化加速の原因が、非同義置換/同義置換速度や塩基転移/転換速度の違いではなく、GC含量の変化によることを示唆した。根粒菌の起源、およびゲノムアイランドとして知られる共生、病原性、代謝、抵抗性関連遺伝子の集合するDNA配列への、GC含量変化に関わる適応的分子進化、正の自然選択について考察する
keywords:共生,窒素固定,根粒菌,比較ゲノム,遺伝子重複