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P26-3 : 砂糖はStreptococcus mutansの細胞死を誘発する
Posted On 20 10月 2014
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1筑波大院・生命環境, 2Dept. Civil Environ. Eng., Massachusetts Inst. Technol., 3国立感染症研・細菌第1部
齲蝕の罹患者は全世界人口の30%,20億人以上にものぼり,重篤な場合,感染性心内膜炎や誤嚥性肺炎といった全身性疾患にも発展しうる疾患である.この齲蝕の原因とされるのが歯表面へのバイオフィルム形成であり,齲蝕はバイオフィルム感染症として最も良く知られた疾病である.口腔バイオフィルムは多種多様な細菌によって形成されるが,齲蝕の原因となるのはmutans streptococciと呼ばれる一群の細菌であり,その中でもStreptococcus mutansが主要な齲蝕原性細菌である.S. mutansのバイオフィルムにおいて,その主要構成成分である細胞外多糖はSucroseを原料として合成される事が知られており,Sucroseは齲蝕の発症における重要な因子である.しかしながら,Sucroseがバイオフィルム中の他の構成成分である細胞外タンパク質,細胞外DNAに与える影響は知られていない.そこで本研究では細胞外DNAに着目し,当研究室で開発された顕微鏡法(Yawata et al., 2010, Inaba et al., 2013)を用いた観察によりSucroseの影響を評価した.その結果,Sucroseにより細胞外DNAの分泌が促進されている事が確認された.この細胞外DNAの分泌はS. mutansの細胞死により行われている可能性があり,本研究により砂糖がS. mutansの細胞死を誘発する可能性が示された.本研究は,砂糖を常食する人類の口腔に対してS. mutansがどのように定着していったかを知る上で非常に重要な知見となる.
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