P19-16 : クラスター化した代謝酵素遺伝子群の導入による有機塩素系殺虫剤gamma-hexachlorocyclohexane資化能を有する新規細菌株の分子育種
Posted On 20 10月 2014
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1東北大院・生命科学・生態システム生命科学
我々は有機塩素系殺虫剤γ-hexachlorocyclohexane (γ-HCH)を分解資化するSphingobium japonicum UT26株のγ-HCH分解代謝系の全貌を解明し、代謝に関わる一連の遺伝子群 (lin genes)を同定した。本株においてγ-HCHはlinAからlinFの6つの遺伝子がコードする酵素によってβ-ketoadipateに変換されるが、これら遺伝子群はUT26株ゲノムに散在するとともに、近傍に存在する挿入配列IS6100の影響で遺伝的に不安定である。そこで、本研究では、lin genesをクラスター化してIS6100非保持の他菌株に導入し、安定にγ-HCH分解資化能を発揮する組換え細菌株を創出することを目的とした。構成的に発現するプロモーター支配下にlinAからlinFをクラスター化した人工オペロンを作製し、広宿主域性ベクタープラスミドを利用してβ-ketoadipate代謝能を有するPseudomonas putida KT2440株、およびUT26株類縁の複数のスフィンゴモナッド株に導入したところ、UT26株と最も類縁性の高いpentachlorophenol分解細菌S. chlorophenolicum L-1株のみがγ-HCH資化能を示した。本遺伝子組換え株は、人工的にγ-HCH資化細菌を創出した初めての例である。一方、UT26株と比較的類縁性の高い他のスフィンゴモナッド株では既知lin genesの導入でもγ-HCH資化能を示さなかったことから、γ-HCH分解資化に必須な未知因子存在の可能性が示唆された。
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