S14-04 : ヒ素呼吸細菌とメディエーターを利用した土壌ヒ素汚染浄化
Posted On 20 10月 2014
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1千葉大学大学院園芸学研究科・応用生命化学領域, 2国立環境研究所・地域環境研究センター
我が国において、ヒ素は検出頻度の高い汚染物質の1つで、土壌汚染対策法の基準超過事例に占める割合も高い。現在、ヒ素汚染土壌の処理法として封じ込めや掘削除去が一般的だが、コスト高である。これに対し近年、微生物のヒ素還元能を利用した処理が注目されている。ヒ素は5価のヒ酸の形態では鉄やアルミニウム鉱物など土壌粒子に吸着しやすいが、3価の亜ヒ酸に還元されると液相に溶出しやすくなる。従って異化的ヒ酸還元細菌のような微生物を利用することで、ヒ素の溶出除去が可能である。異化的ヒ酸還元酵素(Arr)はペリプラズムや細胞膜に局在するため、鉱物に吸着したヒ酸の還元には何らかの細胞外電子伝達経路が必要と考えられるが、詳細は不明である。一方、ヒ素の吸着ホストである鉄鉱物の溶出を細胞外電子伝達で促すことにより、ヒ素の溶出を促進できるケースもある。例えば、異化的ヒ酸還元細菌の一種であるBacillus selenatarsenatis SF-1は、土壌鉱物中のヒ酸を直接還元して亜ヒ酸を溶出する能力を持つが、メディエーターであるAQDSやリボフラビンの存在下で、その溶出率が顕著に向上する。これは、SF-1により還元されたメディエーターが、鉄鉱物を還元溶解し、その結果吸着していたヒ素が遊離しやすくなったためと考えられている。このように、微生物の細胞外電子伝達能をバイオレメディエーションに応用することで、より効率的な浄化技術の構築が可能かもしれない。本講演では、メディエーターを用いたバイオスティミュレーションによるヒ素汚染土壌の浄化実験についても紹介し、細胞外電子伝達の応用の可能性について討議したい。
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