O21-01 : 海洋性化学合成硫黄酸化細菌を起点とする海底有機堆積物の嫌気分解過程
Posted On 20 10月 2014
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1産総研・環境管理, 2産総研・生物プロセス, 3東大・工, 4石巻専修大・理工, 5農工大・農
【背景】海底有機堆積物の蓄積は、富栄養化が進行した閉鎖系海域において多く報告されてきた。一方、東日本大震災による津波で大量の堆積物が陸上に打ち上げられた事から、解放系沿岸海域においても堆積物が分解されずに蓄積され続けてきた事実が明るみになった。我々は、海底環境に豊富に存在する硫酸や鉄(III)を電子受容体とする嫌気分解が堆積物中では微弱である事を示してきた。本研究では、硝酸還元条件における海底有機堆積物の分解過程を化学分析および次世代シークエンサー解析によって明らかにした。
【方法・結果】宮城県東松島市に大震災津波で打ち上げられた堆積物を採取した。堆積物を無機海水培地へ嫌気的に懸濁した後、硝酸塩を20 mMの濃度で添加し、25℃で5日間培養した。培養物から経時的にDNAとRNAを抽出し16S rRNA遺伝子を対象に次世代シークエンサー解析を行った。培養2日目に硝酸濃度の減少が観察され、Sulfurimonas属やThiohalomonas属の新規な硫黄酸化細菌が増加した。5日目にはN2Oと硫酸の生成が観察され、堆積物中の硫黄成分は減少した。この時、上記の硫黄酸化細菌群が群集全体の約60%を占めると共に、鉄還元細菌、酢酸資化性メタン生成菌、低級脂肪酸の共生酸化細菌の代謝活性化が観察された。さらに硫黄酸化細菌の優占種を分離培養した結果、これらは硝酸還元能を有し、炭酸固定により生育することが分かった。以上から、新規な海洋性化学合成硫黄酸化細菌が硝酸還元条件下で独立栄養的に生育し、他の嫌気微生物群に炭素源を供給することで海底有機堆積物の嫌気分解過程の起点になることが強く示唆された。
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