O13-01 : 細胞外電子伝達として機能する固体腐植ヒューミンによる嫌気脱ハロゲン微生物の活性化
Posted On 20 10月 2014
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1名大・エコトピア研, 2名大院・工
嫌気性条件下での脱ハロゲン反応は、有機ハロゲン化合物の微生物分解における第一段階として重要である。この反応を担う脱ハロゲン微生物の単離と遺伝子の解析が行われているが、嫌気脱ハロゲン微生物の活性を土壌や底質を含んだ系でしか維持できない場合も多く経験されている。我々は土壌・底質の役割に注目し、その成分である固体腐植ヒューミンが嫌気脱ハロゲン微生物の細胞外電子伝達物質として機能していることを見出した。 ギ酸を電子供与体ペンタクロロフェノール(PCP)を電子受容体とする嫌気PCP脱塩素培養集積物をアッセイ系とした。この集積系では、土粒子が無くなるとトリクロロフェノール以上の多塩素化フェノールの脱塩素反応が進まなかった。土粒子をエタノール抽出、フッ化水素酸処理しても脱塩素活性は維持されたが、過酸化水素処理では活性が失われた。土壌から腐植酸をアルカリ抽出したところ腐植酸画分では活性が維持できなかったが抽出できない不溶性腐植ヒューミン画分で活性が維持できた。固体腐植ヒューミンをあらかじめNaBH4還元あるいは電気化学的還元をすると、ギ酸無しでもペンタクロロフェノールの脱塩素活性が維持された。サイクリックボルタンメトリ解析から、固体腐植ヒューミンが酸化還元容量を有することを確認した。NMR、IR、ESR解析からキノン骨格が酸化還元中心の一つであることを明らかにした。 これまで水溶性腐植物質による細胞外電子伝達機能は報告されているが固体腐植ヒューミンの細胞外電子伝達能は見過ごされてきた。固体腐植ヒューミンは野外で用いても流亡しない有利な特性を有しバイオレメディエーションへの応用が期待される。
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