Previous Story
P26-8 : 芽胞形成細菌における環境中の温度に応答したバイオフィルム形態変化
Posted On 20 10月 2014
Comment: Off
1筑波大・生命環境, 2筑波大院・環境科学
微生物は外界の環境に応答し、様々なストレスに適応して生存している。多くの実環境中の微生物は集団であるバイオフィルムを形成することによって生育することが知られている。グラム陽性偏性嫌気性芽胞形成性のウェルシュ菌(Clostridium perfringens)は土壌中や動物の腸管内などの環境中に広く在住しており、食中毒やガス壊疽を引き起こす。近年、本菌は芽胞を形成するだけでなく、バイオフィルムを形成することによって種々のストレスに耐性を得ることが明らかとなった。我々は外界の温度に応答して、本菌のバイオフィルム形態が大きく変化することを見出した(1)。本菌は、環境中の温度(25°C)では細胞外マトリクスに富んだ膜状の疎なバイオフィルムを形成する一方、宿主体内の温度(37°C)では基質表面への付着性を示す密なバイオフィルムを形成した。本菌の宿主細胞への付着にはIV型線毛が関与することが知られているが、37°C下の付着型バイオフィルム形成にはIV型線毛の構成成分PilA2が必須であった。さらに芽胞形成調節因子であるSpo0Aの欠損株では、温度に応答した細胞外マトリクス産生及びIV型線毛の発現調節が欠失した。温度に応答したバイオフィルム形態変化には芽胞形成因子が必要であることから、本菌のバイオフィルムと芽胞形成には深い関連が示唆される。本菌は外界の温度を感知することによって宿主の内外といった環境を認識し、バイオフィルムの形態を変化及び適応させていると考えられる。 (1) Obana et al. (2014) J. Bacteriol., 196, 1540-1550.
keywords:バイオフィルム,温度,芽胞形成,ウェルシュ菌,IV型線毛