PG-103:花に生息する嫌気性細菌に関する研究
1東農大院・バイオ, 2東農大・ゲノム解析センター
【目的】嫌気性細菌であるビフィズス菌の多くは動物腸管内に生息するが、例外としてミツバチの腸管から高いO2耐性を示すビフィズス菌が単離された報告がある。そこで我々はミツバチの腸内細菌が花に由来すると推定した。糖源として蜜が豊富な花には特有の微生物叢の存在も推定されることから、2006年から花に生息する嫌気性細菌の探索を行っている。その結果、花から乳酸など酸を生成する嫌気性細菌のコロニーが多く検出され、花に特有の嫌気微生物叢の存在が強く推定された。またその過程で動物からは単離報告例のない新種の嫌気性乳酸菌が単離され、Lactobacillus floricolaとLactobacillus ozensisを提唱した1)。本研究では花に生息する嫌気性細菌叢の解明と新たな微生物資源の探索を目的とする。
【方法】花試料は2006年から2015年にかけて群馬県、長野県や北海道などの国立公園で許可を得て、ミズバショウ自生地を中心に日本全国で採取した。採取した花はそのまま、あるいは部位ごとに培養法に供し、得られたコロニーをランダムに選択し、16S rRNA遺伝子解析を行った。また、同試料からDNAを抽出し、次世代シーケンサーによる微生物叢解析に供し、培養法との相関性を解析した。
【結果】尾瀬国立公園などの人の生活圏外で採取した花からはLactobacillus属、Lactococcus属、Leuconostoc属などの乳酸菌が主に単離され、多いもので花1輪あたり104〜108ものコロニーが得られた。また、ミズバショウからは年度や地域性を問わずCarnobacterium属細菌に分類される乳酸菌が多く単離され、両者が共生関係にある可能性が推定された。また、メタゲノム解析の結果、培養法で得られた結果との相関性が観察され、花における嫌気性細菌叢の存在が確認された。嫌気性菌が花に生息する意義の解明を目的として、生理学的な特性の解析と共に、採取地周辺環境の菌叢解析を進めている。
Kawasaki et al. IJSEM 61:1356-1359 (2011), IJSEM 61:2435-2438 (2011)
keywords:anaerobe,lactic acid bacteria,flower