PJ-178:ラン菌根菌は内生バクテリアを保持するのか
1茨城大・院農, 2茨城大・農
近年、菌類に内生するバクテリアの存在が報告されている。その多くは、Mortierella spp.やRhizopus spp.等の接合菌類およびGigaspora sp.等のグロムス門から検出されており、子_菌類や担子菌類からの同バクテリアの報告は限定的である(高島ら、2015)。ラン科植物と共生関係を結ぶ担子菌類であるラン菌根菌でも、 Tulasnella spp.および Ceratobasidium spp.が、内生バクテリアを保持している可能性が示された(McCormick et al. ,2014)が、この内生バクテリアの生態的、系統的特徴についての詳細は明らかにされていない。そこで本研究では、ラン菌根菌を材料として、内生バクテリアを検出し、その存在について考察することを目的とした。
2015年4月に採集したネジバナSpiranthes sinensis var. amoenaからラン菌根菌様菌株を21菌株(Epulorhiza sp. 6菌株、Tulasnella sp. 7菌株および未同定8菌株) 分離した。そのうち9菌株を無作為に選抜し、LIVE/DEAD_ BacLight™ Bacterial Viability Kitsによる染色およびバクテリア特異的プローブ (EUB338) による蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を用いた蛍光顕微鏡観察に供試した。その結果、LIVE/DEAD_ BacLight™ Bacterial Viability Kits染色では9菌株全てにおいてバクテリア様構造物が観察された。さらに、Epulorhiza sp. Ss15Bd1-1株においてはFISHでバクテリア様構造物が観察された。以上より、これらラン菌根菌が内生バクテリアを保持している可能性が示された。これら9菌株を含めた全21菌株について、バクテリア特異的プライマー(10F-907Rおよび10F-1541R)を用いてPCRを行ったが、バクテリアDNAの増幅は確認されなかった。
これらの解析結果をふまえ、ラン菌根菌における内生バクテリアの存在について議論する。
keywords:orchid mycorrhizal fungi,endo-bacteria,fungi-bacteria association