PJ-174:根部エンドファイトVeronaeopsis simplexから分離されたRhizobium sp. Y9株の全ゲノム解析
1茨城大・農, 2Sultan Ageng Tirtayasa Univ
Veronaeopsis simplexは現在までに分離源の異なる3菌株(CBS 588.66、Y34およびIBA K45)が報告されており、Y34およびIBA K45は根部エンドファイトとして植物の生育促進効果を示すことが明らかとなっている。一方、3菌株に共通してRhizobium sp.が菌糸に内生または外生していることが確認されており、宿主菌類による植物への生育促進効果にも影響を及ぼすことから共生関係にある可能性が示唆されている。さらに、V. simplex Y34の菌糸からはRhizobium sp. Y9株が分離されている。そこで本研究では、このRhizobium sp. Y9株の全ゲノム解析を行い、ゲノム情報から宿主菌類との関係性についての推察を行った。
全ゲノム配列情報の解読にはPacBio RS IIおよびIllumina Miseqを用いた。ゲノムアセンブリソフトウェアHGAP2によりde novoアセンブリを行い、環状染色体、線状染色体、および環状プラスミドのコンティグ配列が得られた。それらの合計塩基配列長は2,746,556 bp、2,081,713 bp、および481,964 bp、GC含量は59.4 %、59.3 %、および57.6 %であった。2つの染色体はそれぞれ40、13個のtRNA遺伝子、および6個ずつのrRNA遺伝子オペロンを有していた。また、MiGAPにより予測された2,644個、1,892個、508個のタンパク質コード領域を用い、ゲノム既知のRhizobium sp.との比較を試みた。その結果、環状染色体および線状染色体ゲノム配列においては、水生マメ科植物Sesbania cannabinaと共生するRhizobium sp. IRBG74株と高い相同性が得られた。環状プラスミドに関してはタンパク質コード領域に大きな違いが見られた。特にRhizobium sp. IRBG74株のプラスミドには、窒素固定や根粒形成に関わる遺伝子群が存在する一方、Y9株のプラスミドにはそれらが存在せず、Ⅳ型分泌機構に関わる遺伝子群が多く存在した。そのため、Y9株はプラスミドより菌類と相互作用の関係を持つ可能性が示唆された。
keywords:根部エンドファイト,ゲノム解析,共生