PG-093:南極海洋沿岸堆積物から分離したMarinifilum科の新規耐冷性従属栄養性細菌
北大・低温研
Bacteroides門の細菌は、海洋をはじめとする水系および土壌などの自然環境に広く分布し、また動物腸管内の常在菌としても重要視されている。Bacteroides門はグラム陰性桿菌の巨大な系統群で、近年体系的な整理が行われたことによりその分類的枠組みの混乱は解消されつつある。Marinifilum属は最近までBacteroides門における系統的帰属が明らかにされないままであったが、この属を単独で含む新科Marinifilim科が設けられている。本研究の目的は、Marinifilim科に属する新規細菌であるSPP2株の系統学的・生理生化学的特徴づけを行うことである。SPP2株は、南極露岩地域の海洋沿岸堆積物を接種源とした嫌気条件下の集積培養系より得られた。菌株の純化は、アガーシェイク法を用いて行った。16S rRNA遺伝子塩基配列の解析では、SPP2株はMarinifilum flexuosumに94%の配列相同性を有していた。SPP2株とその近縁な環境配列の一群はMarinifilum属に隣接するが独立した系統群を形成した。SPP2株の細胞は細長い桿状であり、単独で存在し、運動性は無かった。また通性嫌気性であり、嫌気条件下では乳酸を用いて増殖した。好気条件下での増殖温度試験の結果、SPP2株は28℃以下の範囲で増殖し、至適温度は18-22℃であったが0℃でも生育した。乳酸塩存在下では硫酸塩や鉄(III)を電子受容体として利用しなかった。菌体脂肪酸組成解析の結果、SPP2株はC15:0anteisoを24%、C15:0isoを20%、C17:02OHを14%の割合で有していた。その他の脂肪酸の含有量からも、SPP2株はMarinifilum属の細菌とは異なることが示唆された。以上の結果から、SPP2株はMarinifilim科における新属を代表する細菌であることが示された。
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