PL-204:洗濯槽常在菌と発生臭気との関連性解析結果
1ライオン株式会社分析技術センター, 2ライオン株式会社オーラルケア研究所, 3東京大学大学院新領域創成科学研究科, 4慶應義塾大学医学部微生物学免疫学教室, 5早稲田大学理工学術院大学院先進理工学研究科
【背景】当社先行研究により、洗濯槽内から発生する不快臭の主成分はジメチルスルフィド等の硫黄系化合物であることが明らかとなった。実家庭で長期間使用した洗濯槽には、菌や多糖などで構成されたバイオフィルム様の汚れが付着することが知られており、硫黄系化合物の発生には、汚れ中に存在する菌の寄与が推測される。しかし、硫黄系化合物と汚れ中に存在する菌の関係は明らかではない。そこで、実家庭における洗濯槽の細菌叢解析を行い、検出された細菌、及び真菌(カビ)を用いて、硫黄系化合物の発生能を評価することで、洗濯槽における不快臭発生原因を解析した。
【方法】14家庭の洗濯機より採取した洗濯槽付着汚れからDNAを抽出し、16S rDNA v1-v2領域を増幅した後、454 GS FLXのシークエンシングにより細菌叢解析を行い、洗濯槽内に生育する主要細菌を特定した。更に実家庭で長期間使用された洗濯機から採取した汚れを培地とし、検出された主要細菌を培養し、各菌の硫黄系化合物(ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、メチルメルカプタン)発生能を評価した。発生した揮発性成分の分析には、固相マイクロ抽出ガスクロマトグラフィー質量分析法(SPME GC/MS)を使用した。
【結果・考察】実家庭の洗濯槽における細菌叢解析の結果、全家庭でMycobacterium、Brevundimonas、Sphingomonas属、13家庭でMethylobacterium属が検出された。細菌叢解析で検出された4菌属から各々選定した特定菌種を用いて、硫黄系化合物発生能を評価した結果、Mycobacterium属でジメチルスルフィド、メチルメルカプタンを、Brevundimonas属でジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、メチルメルカプタンを発生することを確認した。以上より、洗濯槽に存在する細菌がバイオフィルム中の成分を栄養源とすることで、不快臭の主成分である硫黄化合物を発生させることが示唆された。また、実家庭の洗濯槽に存在する真菌についても、発生臭気との関連性について考察を行った。
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