PN-226:土壌におけるMycobacterium属菌の群集構造
1阪大院・薬, 2阪大・薬, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10
【目的】肺非結核性抗酸菌症の患者数は1990年代以降、先進国を中心に世界中で増加している。起因菌である非結核性抗酸菌は、結核菌群およびらい菌を除くMycobacterium属菌の総称であり、自然環境中に広く分布している。身の回りの水環境や土壌環境で生じたエアロゾルが感染の媒介となっていると考えられているが、未だ感染源、感染経路は明らかとなっていない。予防のためには非結核性抗酸菌の環境内動態の解明が必要不可欠であることから、本研究では感染源のひとつとして考えられている土壌に着目し、Mycobacterium属菌の現存量およびその群集構造を分子微生物生態学的手法により明らかとした。
【方法】2014年4月から9月にかけて大阪大学吹田キャンパス内23地点の表層土壌(庭園3ヶ所、樹木下10ヶ所、植生のある土壌6ヶ所、植生のない土壌4ヶ所)および植木鉢土壌4ヶ所を採取し、土壌中の微生物よりDNAを抽出した。細菌現存量およびMycobacterium属菌の現存量は、それぞれ16S rRNA遺伝子、atpE遺伝子を標的とした定量的PCR法により測定した。また、環境中のMycobacterium属菌の群集構造は、hsp65遺伝子を標的としたpyrosequencing法により決定した。
【結果および考察】細菌およびMycobacterium属菌の現存量を測定したところ、ほぼ全ての土壌においてそれぞれ107〜1010 cells/g、105〜107 cells/gであり、Mycobacterium属菌は植生のない土壌を除き、全細菌に対し0.1〜10%の比率で存在していることがわかった。また、hsp65遺伝子の増幅産物をpyrosequencing法により約2,000リード解析したところ、多様な種の非結核性抗酸菌が存在していることが明らかとなった。これらのうち日本において臨床分離頻度が最も高いM. aviumに着目したところ、(1)今回対象とした土壌には本菌が幅広く存在すること、(2)植木鉢のように乾燥と湿潤を繰り返す環境において優占する可能性があることを見出した。当研究室ではこれまでに身の回りの水環境においても検討を進めており、これらの結果を統合し考察することにより、非結核性抗酸菌の感染源の理解に貢献できると考えている。
keywords:非結核性抗酸菌,hsp65遺伝子,pyrosequencing法