PB-043:剪定枝葉堆積物に存在するセルロース分解-窒素固定機能を発現する細菌集団の解析
1鹿児島大学院連合農学研究科, 2鹿児島大学農学部
【目的】
街路樹等の剪定枝葉や刈草の堆肥化過程の初期段階において窒素固定が生じていることを見出し、セルロースを唯一の炭素源とした無窒素培地にその一部を添加したところ、セルロース分解と窒素固定が並行して進行する培養系が得られた。すなわち、刈草剪定枝葉の様なC/N比の高い有機物の分解過程では窒素固定細菌が窒素の供給を行い、有機物の分解を促進することが推察された。本研究では、16S rRNA遺伝子、及びnif H遺伝子を利用し、このセルロース分解・窒素固定活性を発現する培養系内の細菌群集構造を調査した。
【方法】
培養系から直接 DNA を抽出、16S rRNA遺伝子、nif H遺伝子を対象とした PCR-DGGE解析により、培養系内の主要な細菌、主要な窒素固定細菌の群集構造を調査した。次に、16S rRNA遺伝子を対象としたTAクローニング法により、培養系を構成する主要な細菌の近縁種情報を推定した。また、選択培地を用いて培養系から細菌を分離、分離菌株の16S rRNA遺伝子、及びnif H遺伝子のPCR-DGGE解析により、培養系の主要DGGEバンドと一致する菌株を選定した。得られた分離菌株は16S rRNA遺伝子を用いた系統解析により分類を行った。
【結果考察】
培養系のDGGEパターンは継代を行っても安定しており、16S rRNA遺伝子では12本、nif H遺伝子DGGEパターンでは、少なくとも5本の主要なバンドが認められた。得られたクローンの16S rRNA遺伝子のシークエンスの情報から、培養系の主要バンドを構成する細菌として、Azospira sp.、Azoarcus sp.、Pseudomonas sp.等の窒素固定細菌、Clostridium sp.等のセルロース分解細菌の近縁種の存在が推察された。分離培養の結果、16S rRNA遺伝子の主要バンドと一致したいくつかの優占細菌種を分離、このうちnif H遺伝子の主要バンドと一致したものは3種で、それぞれ、Azoarcus sp.、Pseudomonas sp.、Azospira sp.の近縁種であった。本培養系には、植物内生細菌として知られる細菌の近縁種が存在し、これらの細菌がセルロース分解細菌と共生し得る可能性が示された。
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