PO-232:Stenotrophomonas maltophiliaのp-クロロフェノールに対する走性センサーの同定
1宇都宮大・工, 2宇都宮大院・工
【目的】Stenotrophomonas maltophilia はp-クロロフェノールや内分泌攪乱物質の疑いのあるビスフェノールA をはじめとする幅広いフェノール類に正の走性を示す。本細菌は12 の走化性センサー様遺伝子を有しており、フェノール類のセンシングに関与する走化性センサー遺伝子を同定することでより効率的なバイオレメディエーションへの応用が期待できる。これまでp-クロロフェノールに対する走性応答ではMcp5が主要な走性センサーであることが明らかとなっている。本発表ではこれに加えてMcp6もp-クロロフェノールのセンシングに関与していることを報告する。
【方法】走化性は以下の方法で測定した。クロロフェノールを含む0.5%アガロース溶液を充填・固化したキャピラリーを40mM MOPS(pH7.0), 5mM MgCl2 溶液で洗浄した菌体懸濁液に挿入し、倒立位相差顕微鏡で観察・録画した。そこから静止画をコンピュータに取り込み二値化した後,キャピラリー開口部付近の菌体を計数して菌体濁度当たりの集積初速度(比集積初速度)で評価した。
【結果】野生株のp-クロロフェノールに対する比集積初速度が7.8 (cells/sec・OD660)であるのに対して、mcp5欠損株は3.2(cells/sec・OD660)と59%減少したのに加えて、mcp6欠損株では6.8(cells/sec・OD660)と14%減少した。このことからMcp6はp-クロロフェノールのセンシングに関与することが示唆された。さらにmcp5, 6を破壊した二重欠損株およびmcp5, 6, 8, 11を破壊した四重欠損株を作製し走性応答を測定した。その結果どちらの多重欠損株も比集積初速度が2.6cells/sec・OD660となり,野生株に対する減少率は同じ(67%)であった。このことから、Mcp8とMcp11はp-クロロフェノールのセンシングには関与しないと考えられた。一方で四重欠損株において走性応答が完全に消失していないことから、p-クロロフェノールに対する他の走性センサーの同定を行うべく,さらなる多重欠損株の作製を試みている。
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