PO-236:食用油分解菌Pseudomonas sp. NP-2株の単離とキャラクタリゼーション
富山大・院・理工
【目 的】一般家庭から,年間約10万トンも排出されている廃食用油を処理する手段として,食用油分解菌とその産生リパーゼの利用が検討されている。また,分解菌の産生リパーゼは,食品加工や化粧品,洗剤などで幅広く利用されているが,さらに高機能なリパーゼとその産生菌が求められている。そこで,我々は,新たな食用油分解菌の単離を試み,計43株の分解菌を得ることに成功した。今回は,その中で最も分解能が高かったNP-2株について報告する。
【方 法】まず,海水や土壌などの試料から,1%(w/v)キャノーラ油を含む液体培地による集積培養と,キャノーラ油を含む寒天培地を用いたハロー形成によって食用油分解菌を単離した。菌種の同定は,16S rDNAの塩基配列をBLAST検索にかけることで行った。油の分解率は,ヘキサンで抽出したキャノーラ油の残存重量から算出した。菌体と培養液上澄中のリパーゼ活性を持つバンドの検出は,SDS-PAGEとトリブチリンを基質とするザイモグラムで行った。さらに,リパーゼ遺伝子は,primer walking(PW)法とinverse PCR(I-PCR)法を用いて解析した。
【結果と考察】16S rDNAの塩基配列を解析した結果,NP-2株はPseudomonas simiae WCS417株と99.7%(1,488/1,492bp)の相同性を示した。本株は,5〜45℃で増殖したが,その至適温度は15〜25℃であると考えられた。また,ハローアッセイの結果,本株はキャノーラ油だけでなく,ゴマ油やラードも分解できることが示された。さらに,キャノーラ油の分解率を測定したところ,25℃の培養2週間で約82.3%だった。SDS-PAGEとザイモグラムで調べた結果,菌体と上澄試料から約52.5kDaにリパーゼ活性を持つバンドが検出された。さらに,PW法とI-PCR法で検出したリパーゼ遺伝子は,1,431bpのORFから成り,推定される分子量は49954.63Daであった。BLAST検索の結果,既報のLipTK-3と塩基配列で92.9%,アミノ酸配列で96.8%の相同性を持つことが示された。また,既知のABCトランスポーターと高い相同性を示す配列や,推定アミノ酸配列中にリパーゼ固有の保存領域GXSXGが存在することが示され,サブファミリーI.3に属することが示唆された。
keywords:lipase,*Pseudomonas* sp.,edible oil