PO-233:根粒菌Bradyrhizobium elkanii USDA94由来のcadABCKのクロロフェノキシ化合物分解能
島根大学・生物資源
【目的】根粒菌Bradyrhizobium elkanii USDA94は、クロロフェノキシ化合物である2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)や2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸(2,4,5-T)を分解できないが、Bradyrhizobium sp. HW13の2,4-D分解遺伝子に相同性のある遺伝子cadABCKを持っている。本研究ではこの遺伝子にクロロフェノキシ化合物分解能があるかを調べるために研究を行った。【方法】B. elkanii USDA94のcadABCKを大腸菌発現用プラスミドpTV118Nにクローニングし、大腸菌JM109に形質転換した。また、cadABCKを根粒菌内で強制発現させるために、プラスミドpBBR1MCS2-STARTにクローニングし、接合伝達によってB. elkanii USDA94に形質転換した。IPTG誘導下で形質転換株の培養上清中のクロロフェノキシ酢酸濃度(初期濃度100μM)と分解産物であるクロロフェノール濃度の経時変化を、超高速液体クロマトグラフィーで測定した。【結果と考察】B. elkanii USDA94のcadABCKを発現させた大腸菌JM109は2,4-D、2,4,5-Tを分解し、等モル量の分解産物が検出された。塩素置換がないフェノキシ酢酸(PAA)も分解し、分解速度は2,4-Dと2,4,5-T分解速度より速かった。cadABCKを強制発現させたB. elkanii USDA94も2,4-Dと2,4,5-Tを分解した。以上の結果から、B. elkanii USDA94のcadABCKにもクロロフェノキシ化合物分解能があることが示された。B. elkanii USDA94が分解遺伝子を持っているにも関わらず2,4-Dと2,4,5-Tを分解しないのは、これらによってはcadABCKの発現が誘導されないからであると考えられる。別実験においてB. elkanii USDA94の2,4-D分解能がPAA共存下で増加したことから、PAAがcadABCK発現を誘導することが示唆された。B. elkanii USDA94のcadABCKはクロロフェノキシ化合物以外の物質を分解するために備わっており、副次的にこれらを分解できるということが推察された。
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