PI-150:Anammox活性に対する20物質(重金属,キレート剤,アミン類,有機溶媒)の影響II. 〜実験データの動力学モデルへの回帰とKi値の推定〜
1中央大・院理工, 2日立製作所
【目的】 我々は,新たに確立した小スケール回分試験系を用いて, 20種の物質(7重金属,4有機溶媒,5アミン類,および4キレート剤)がCa. Brocadia sp.の集積培養系のanammox活性に及ぼす影響を定量的に解析した。その結果,15種類の物質は活性を阻害し,各物質の濃度と相対活性の関係には,閾値が存在する場合(4物質)と,阻害物の濃度の上昇につれて見かけ上直線的あるいは指数的に活性が減少する場合(11物質)があった。ここでは,後者を対象に,Michaelis-Menten型の動力学モデルに回帰することを試みた。実験条件に合わせてモデル式を変形し,実験データをモデルに対して回帰させ,阻害物質定数(Ki)を求めた。
【実験】 回分試験系での基質(NH4+)濃度(1.5 mM)がCa. Brocadia sp.集積培養系のanammox活性のKmより遥かに大きい場合,非拮抗および反拮抗阻害型モデルは単純化できる。また,拮抗阻害モデルで記述できる阻害はこの試験系では検出できない。そこで,実験的にKm値を求めたところ,50.9 _Mであった。
【モデル式の変形と実験データの回帰】
実験的に求めたKm値から,本回分試験系では,Km+S ≒ Sと近似できることが示された。非拮抗および不拮抗阻害はいずれもv = Vmax ・Ki / ( I + Ki )と単純化された。ここで検討対象とした11物質の実験データ(阻害物の濃度とanammox相対活性との関係)をこの式に対して回帰したところ,全ての場合,R2 は0.95以上であった。この結果は,これら11物質は(Ni2+, Cu2+, Zn2+, 1,4-dioxane, DMSO, DMF, MEA, TEA, HMA, EDDHA, クエン酸),見かけ上、anammoxを非拮抗的あるいは不拮抗的に阻害する可能性を示唆する。また、この条件下では、anammox活性が最大反応速度の50%となる時、Ki = Iが成り立つ。つまり、Ki = IC50 (50% inhibition concentration)となる。実際,モデル式を当てはめずに,実験的に推定したIC50値と,回帰したモデル式から導いたKi値はほぼ一致した。現在,閾値を持つ場合についても,生態毒性学モデルで説明することを検討中である。
keywords:anammox,inhibition kinetics,batch test,15N tracer technique