PL-210:高度浄水処理工程において変化する潜在的な微生物増殖特性の評価
1東京大学大学院工学系研究科 都市工学専攻 水環境制御研究所 , 2東京大学大学院工学系研究科 附属水環境制御研究センター
凝集沈殿−急速砂ろ過による通常の浄水処理に、オゾン酸化と生物活性炭ろ過を追加した高度浄水処理が大都市を中心に普及している。高度浄水処理では、オゾンによって微生物が不活化される一方、生物活性炭上で増殖した微生物が流出し、水道水中の微生物の起源になっていることが推測されている。また、オゾンによる酸化分解作用により生分解性有機物が生成するが、生物活性炭に付着した微生物がそれらを除去することも知られている。しかしながら、各処理後にどのような微生物が生残し、どの程度増殖するポテンシャルを有しているのかは十分に明らかになっていない。そこで、本研究では、実際の高度浄水処理施設を対象として、凝集沈殿、オゾン、生物活性炭の各処理水における微生物増殖特性を比較した。
2015年1月〜4月に実際の高度浄水処理施設において、凝集沈殿処理水、オゾン処理水、生物活性炭処理水を、アニュラーリアクター(AR1、AR2、AR3)にそれぞれ通水した。リアクター内の回転ドラムに装着したポリカーボネート製のクーポンを経時的に採取し、付着全菌数と16S rRNA遺伝子を標的とした群集構造を解析した。
クーポン上の全菌数は、いずれのリアクターにおいても、運転開始1週間程度で約10_ cells/cm_オーダーに増加し、1ヶ月以降には約10_ cells/cm_オーダーで安定した。97日後の各リアクターにおける付着数は、AR1〜AR3でそれぞれ1.2×10_ cells/cm_、5.9×10_ cells/cm_、1.1×10_ cells/cm_ であり、リアクター間の差異は小さかった。運転開始約1ヶ月後のクーポン試料について、微生物群集構造解析を行った。AR1及びAR2では、Gammaproteobacteria綱に属するPseudomonadales目がそれぞれ78%、94%と優占していた。一方、AR3ではBetaproteobacteria綱に属するMethylophilales目が41%、Burkholderiales目が49%を占めており、付着微生物の組成はAR1、AR2とは大きく異なっていた。生物活性炭処理の前後で処理水中の菌相が大きく変容することから、クーポンに付着して増殖する微生物の組成にも変化が生じていることが推察された。
keywords:高度浄水処理工程(オゾン酸化、生物活性炭ろ過),微生物増殖特性,16S rRNAアンプリコンシーケンシング