Previous Story
P23-4 : アイソトポマー分析を利用したFusarium属糸状菌による根圏N2O発生の特定
Posted On 20 10月 2014
Comment: Off
1東北大学 生命科学研究科, 2東京工業大学 総合理工学研究科, 3東京工業大学 地球生命研究所, 静岡大学 農学研究科,
一酸化二窒素 (N2O) は現在大気中に約320 ppbで存在する強力な温室効果およびオゾン層破壊ガスであり、農耕地の中でも特にマメ科植物から多く発生していることが知られている。稲葉らの研究により、ダイズ根圏から発生するN2Oは根粒菌とその他土壌微生物との相互関係によって決まることが分かっている(Inaba et al. 2012)。脱窒糸状菌の中でもFusarium属糸状菌は高い脱窒能を持つことが知られており(Shoun et al. 1991)、N2O発生ダイズ根圏のDNAからFusarium sp.が検出されたため(Inaba et al. 2009)、老化根粒からFusarium属糸状菌を単離同定した結果、多くの株がFusarium solaniであった。ダイズ根圏からのN2O発生における脱窒糸状菌の関与を調べるため、老化処理を施したモデル実験系にシクロヘキシミドを添加しN2O発生を測定した結果、ダイズ根圏からのN2O発生が顕著に減少した。また老化根粒DNAを調製し、RISA解析を行った結果、シクロヘキシミド添加区では、Fusarium solaniに相当するバンドが無添加区と比較して明らかに薄くなった。さらに、モデル実験系から発生するN2Oが糸状菌由来であるかを明らかにするため、シクロヘキシミドを添加•無添加条件下でN2Oのアイソトポマー分析を行った結果、シクロヘキシミド処理によりアイソトポマーのSP値が低下した。これらの結果から、Fusarium属糸状菌はダイズ根粒根圏からのN2O発生を担う重要な土壌微生物であり、N2O発生のソースを担っていると示唆された。
keywords:N2O,脱窒,Fusarium属糸状菌,アイソトポマー,