PG-104:硫酸還元細菌が生成に関わるバイオミネラルの特性解析
1静大院・工, 2静大・工, 3東大院・理学系研究所
微生物が鉱物生成に関与していることが明らかになるに伴い、それらバイオミネラルの多様な形態や機能に多くの関心が持たれつつある。本研究室では、汽水湖底泥を接種源とした微生物燃料電池(MFC)負極上から、six-well plate法にて分離した微生物が生成するバイオミネラルが蓄電能を有することを見出している。そこで本研究では、生成微生物および生成物質を特定し、特性を明らかにすることを目的とした。
まず分離した2菌株(HK2株およびHK4株)を、乳酸を電子供与体、硫酸と三価鉄を電子受容体とした培地で培養したところ、培養液中の硫酸および鉄の減少に伴い、沈殿物が生成され二価鉄が検出された。そこで黒色の物質を物質科学的および電気化学的に解析した。その結果、HK2株由来の物質(RBM2)は数〜数十 μmの襞構造を有するフィルム状あるいはロゼッタ状であり、単結晶のMackinawite(FeX+1S, X=0~0.11)であることが示された。HK4株由来の物質(RBM4)は、数十 μmのフィルム状物質と約数百 nmの粒子状物質が混在し多結晶であることが示されたが、物質同定は困難であった。両物質とも酸化還元部位を持つことが示され、培養に伴いそれらの電位は細かく変化した。また、時系列的に解析した結果、物質の鉄と硫黄の組成が変化し、それに伴い充放電容量も変化した。分離したHK2株およびHK4株の16S rRNA遺伝子を解析した結果、両株はDesulfovibrio oryzaeに相同性それぞれ98.7 %および99.4 %を示し、これらは互いに99.7 %の相同性を示した。
以上の様に、微生物が嫌気的に蓄電能を持つバイオミネラルを生成することはこれまで当研究室を除いて報告例が無く、極めて興味深い結果である。また分離されたHK2株およびHK4株は極近縁であるにも関わらず、その生成物質の特性は諸々の差異が確認され、バイオミネラルの機能的多様性が示唆された。
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