PO-234:異化的ヒ酸還元菌を用いた土壌中ヒ素の可溶化条件の検討
1千葉大学園芸学部, 2千葉大院園芸, 3国立環境研究所
現在、ヒ素汚染土壌は封じ込めや掘削除去により処理されているが、土壌自体からヒ素を除去できないため、根本的な解決には至らない。異化的ヒ酸還元細菌は、鉄やアルミニウム鉱物に吸着しやすいヒ酸As(V)を、吸着性の低い亜ヒ酸As(III)に還元し液相に溶出させる性質を持つため、土壌中ヒ素の可溶化・除去技術への応用が期待されている。我々はこれまで、乳酸無機塩培地、ヒ素汚染土壌、及び土壌懸濁液を混合し嫌気培養することで、Firmicutes門細菌が優占すると共に、ヒ素が溶出することを確認している。そこで本研究では、より実用的な処理条件を確立するため、培地を添加しない条件でのヒ素可溶化試験を行った。さらに上記培地を使用した条件下で集積された、異化的ヒ酸還元細菌の単離も試みた。固相ヒ素として、ヒ酸と塩化鉄の共沈殿物As(V)-Fe(III)、またはヒ酸と硫酸アルミニウムの共沈殿物As(V)-Al(III)を用いた。炭素源として乳酸または酢酸、微生物植種源として土壌懸濁液をそれぞれ加え、嫌気培養した。10日ごとにサンプリングを行い、ICP-AESによりヒ素濃度、フェロジン法によりFe2+濃度を測定した。また、培養40日目の微生物群集構造をPCR-DGGE法で解析した。
乳酸を炭素源とした場合、培養40日目にAs(V)-Fe(III)及びAs(V)-Al(III)から約50%のヒ素が溶出した。As(V)-Fe(III)においては、Fe2+の溶出量とヒ素の溶出量に有意な正の相関(R2=0.985)があった。一方、As(V)-Al(III)では炭素源を添加しなくてもヒ素溶出が確認され、その溶出はAs(V)-Fe(III)よりも速かった。PCR-DGGE解析の結果、全ての条件でDesulfitobacterium及びPelosinus属細菌が優占することがわかった。以上のことから、培地成分を添加しなくても固相ヒ素の可溶化は可能なこと、また以前の研究と同様に、土壌中Firmicutes門細菌がヒ素溶出に関与する可能性が示唆された。一方、集積培養から単離された異化的ヒ酸還元細菌は、高熱性嫌気性のFirmicutes門細菌Tepidibacillus fermentansと16S rRNA遺伝子が97%近縁であり、新規な異化的ヒ酸還元細菌と考えられた。
keywords:arsenic,mobilization ,bioremediation,Firmicutes ,isolation