PL-209:アミロイドタンパク形成に関与する新規因子の解析
静大院・工
自然環境中の多くの微生物は生活しやすい空間であるバイオフィルムを形成し生息している。バイオフィルムは微生物細胞と微生物の生産する多糖やタンパク等の細胞外高分子化合物(EPS)の凝集体であり、EPSはバイオフィルム形成において重要な役割を果たしている。水圏に存在する微生物の主要なEPS構成成分の一つとして、アミロイドタンパクが知られている。本研究では当タンパクを生産する大腸菌を用いて、その新規制御因子の探索を行うことを目的とした。
大腸菌K12株の遺伝子欠損株集団(KEIO collection)および遺伝子過剰発現株集団(ASKA library(-))を用いて、EPS生産量およびバイオフィルム形成量の解析を行った。当菌株において、アミロイドタンパク(curli)は30°C以下で発現されることから、30°Cと37°Cで比較を行った。KEIO collectionの4101株を用いた解析では、30°Cで31株、37°Cで20株にcongo-red吸着性EPS生産量の変化が見られた。ASKA library(-)の4118株を用いた解析では、30°Cで24株、37°Cで19株にcongo-red吸着性EPS生産量の変化が見られた。両変異株ともに30°Cと37°Cでは異なる遺伝子がEPS生産に関与していた。30°C でEPS生産量が変化したKEIO collection 31株をマイクロタイタープレートで培養した結果、新たに7遺伝子がバイオフィルム形成およびEPS生産に関与することが示唆された。curliの主要構成因子であるCsgA、ならびにcsgBACオペロンの正の転写制御因子であるCsgDの遺伝子転写量をリアルタイムPCR法により定量したところ、ΔyjdAにおいて両遺伝子発現量が減少した。また、透過電子顕微鏡を用いた解析ではΔyjdAの細胞周辺にcurli形成が観察されなかった。YjdAはヌクレオシド三リン酸塩加水分解酵素ドメインを有するが、その機能の詳細は知られていない。現在、大腸菌における新規因子YjdAがcurli生産にどのように関与しているのか、その機構を解析中である。
keywords:大腸菌,EPS,バイオフィルム,curli