PJ-180:ウェルシュ菌のメンブランベシクルを介した宿主免疫誘導
1筑波大・院・生命環境, 2筑波大・生命環境系, 3感染研・細菌一
近年、多くの微生物が20〜500 nmのメンブランベシクル(MV)を生産し、細胞外に放出することが明らかになってきた。MVはDNAやシグナル物質、毒素などを含有するという報告がなされていることから、MVがそれらの輸送体として機能していることが示唆されている。MVはグラム陰性細菌でその生産が多く報告されている一方、外膜を持たないグラム陽性細菌における報告は少なく、その詳細な機能や形成メカニズムはほとんど明らかにされていない。我々は、グラム陽性細菌であるウェルシュ菌(Clostridium perfringens)がMVを生産し、細胞外に放出することを見出した。ウェルシュ菌はヒトを含む動物の腸管内に常在する偏性嫌気性の常在細菌である一方で、多くの毒素や細胞外酵素を生産することから食中毒やガス壊疽をもたらす病原性細菌としても知られている。ウェルシュ菌の胞子形成不全株(Δspo0A)ではMV生産が見られないことから、本菌のMV生産は能動的過程であることが示唆された。また、ウェルシュ菌MVは核酸やタンパク質、さらには膜画分よりも多くのペプチドグリカンを含有することが明らかとなった。ウェルシュ菌MVの宿主における機能を解析するため、ウェルシュ菌MVをマウスマクロファージ様細胞J774.1に添加したところ、IL-6やTNF-αといった各種炎症性サイトカインの放出を誘導することが明らかとなった。また、MV添加により、ペプチドグリカンを受容して各種炎症性サイトカインの放出を誘導する受容体として知られるToll-like receptor 2(TLR2)の発現が上昇し、TLR2阻害剤によってMV添加時におけるIL-6誘導量が減少した。これらのことから、ウェルシュ菌MVがTLR2を介して宿主細胞からの各種炎症性サイトカインの放出を誘導することが示唆された。さらに、ウェルシュ菌MVをマウスの鼻腔に接種したところ、血中にはウェルシュ菌特異的IgG抗体が、全身の粘膜面(鼻腔、口腔、腸管)には分泌型IgA抗体が産生誘導されることが明らかとなった。以上のことから、ウェルシュ菌MVは宿主の自然免疫および獲得免疫を誘導することが示唆された。本研究により、ウェルシュ菌MVは宿主免疫に大きな影響を与えている可能性が考えられる。
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