PL-211:インドールはStreptococcus mutans のBiofilm形成量を増加させる
1筑波大 生物資源, 2産総研 環境管理, 3筑波大院 生命環境, 4感染研 細菌第一部
口腔内の細菌叢は人にとって最も身近な複合微生物系である。口腔内には約700種の細菌が存在し、これらの細菌は歯表面などにバイオフィルム(歯垢)を形成する。このバイオフィルムは単一種のみで構成されるのではなく、様々な種の細菌を含んだ構造であり、複数種の成長と安定に重要な機構である。また口腔の2大疾患である齲蝕と歯周病は、バイオフィルム感染症として知られる。Streptococcus mutansは口腔内でEPS (Extracellular Polymeric Substance)に包まれたバイオフィルムを形成し、齲蝕の原因となる。またS. mutans はCSP、XIPと呼ばれる二種のペプチドシグナルを用いたクオラムセンシングによってバイオフィルム形成を制御することが明らかとなっている。一方、いくつかの歯周病原性細菌はトリプトファンを基質にインドールを産出する。インドールは多くの微生物でバイオフィルム形成に関与する因子としても知られることから、本研究ではインドールのS. mutansのバイオフィルムへの影響を解析した。S. mutansをインドールまたはその誘導体である4-ヒドロキシインドール (4HI) 存在下で24穴プレートにて静置培養した結果、バイオフィルム形成量の増加が観察された。また、インドールおよび4HI 存在下ではバイオフィルム中のEPSの構成要素の一つである細胞外DNA量が増加していた。さらに、S. mutans のCSP生産遺伝子であるcomC, およびXIPエフェクター遺伝子であるcomX の欠損株培養時にインドールおよび4 HIの添加した場合は、バイオフィルム形成量の増加は見られなかった。このことより、インドールがCSP およびXIPクオラムセンシング経路を介してS. mutans のバイオフィルム形成に関与することが示唆された。本研究の結果より、口腔内におけるインドールを利用したインドール生産菌とS. mutansの細胞間相互作用の可能性が示された。
keywords:*Streptococcus mutans*,バイオフィルム,インドール