PL-201:バイオフィルムの形成に抗菌材が与える影響の解析
1立命大 院 生命, 2立命大 生命
抗菌材とは細菌の増殖を抑制する効果(抗菌効果)を持つ材料のことである。抗菌効果は、実験室レベルで単一菌株を用いた短期間の実験により評価されてきており、様々な菌が存在する環境(例えば屋外)で長期間の実験はまだ行われていない。これまでの研究で、抗菌材を屋外に約1ヶ月間設置すると、その表面に微生物がバイオフィルムを形成することが解ってきた。また、屋外ではバイオフィルム内の環境や微生物に光が影響を与えることも解ってきている。そこで本研究では、光の影響を考慮しながら、抗菌材表面におけるバイオフィルムの形成過程と、バイオフィルムに対する抗菌材の影響を調べた。
2015年5月27日に、立命館大学内の池(約50×60 m、水深約2 m)の水中に抗菌材および非抗菌材を明暗条件(明条件:約600 _mol/m2・s、暗条件:約310 _mol/m2・s)で設置した。それら表面に形成されたバイオフィルムを経時的に採取し(設置後1、3、5、7週目)、バイオフィルムの湿重量、バイオフィルム中の全菌数、コロニー形成数、酸性ムコ多糖量、および細菌群集構造を解析した。
明条件の非抗菌材表面に形成されたバイオフィルムでは、湿重量(wet-g/cm2)、全菌数(cells/wet-g)、およびコロニー形成数(CFU/wet-g)が形成前半(1~3週目)に増加し、その後は減少する傾向があった。これらの経時変化は抗菌材表面でも見られた。しかし、形成前半に抗菌材表面の方が非抗菌材表面よりも、全菌数が多く、コロニー形成数が少なかった。抗菌材がバイオフィルム内の細菌の増殖や、細菌群集構造に影響を与えることが考えられた。
暗条件では、非抗菌材、抗菌材のどちらでも、湿重量が7週目まで増加し、明条件よりも多くなっていた。一方、全菌数とコロニー形成数は明条件と似たような値で同様の経時変化を示した(一部例外あり)。抗菌材と非抗菌材とで比べると、全菌数は同程度であり、コロニー形成数は抗菌材表面の方が多くなっていた。明条件(抗菌材表面の方が、全菌数が多く、コロニー形成数が少ない)とは異なる結果であったことから、光によって抗菌材の影響が変わることが推測された。
発表では、他のデータ(酸性ムコ多糖量、細菌群集構造、および周辺環境データ)も含めて、抗菌材および光がバイオフィルム形成に与える影響を議論する。
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