PI-148:微細気泡による大腸菌と発光細菌の活性化と制御に関する研究
群馬大学
本研究はバクテリアと微細気泡の関係を培養効果の観点から探る基礎研究である。近年
、微細気泡の様々な効果について医療、農業、工業など多様な分野から注目を集めている
が、比較的新しい分野であるためエビデンスに乏しい。たとえば、微細気泡の送気と粗大
気泡の送気ではバクテリアの増殖に違いが認められているがそのメカニズムは明らかでな
い。本研究では微細気泡がバクテリアの培養に与える影響を明らかにするため、大腸菌と
発光細菌を対象として培養時に純酸素あるいは空気の微細気泡を供給し、粗大気泡を用い
た培養や振とう培養との違いを比較検討した。
微細気泡の供給は当研究室で開発した小型微細気泡発生装置MiBosを用いて行った。気
泡径は約10〜50 μmである。粗大気泡の発生には一般的な水槽用の散気管を用いた(気泡
径 数mm以上)。供給ガスは純酸素(100%酸素)あるいは空気(21%酸素)である。用
いたバクテリアは大腸菌E. coliと発光細菌Photobacterium phosphoreumである。培地は大
腸菌培養にはM9、発光細菌の培養にはBacto Marine Broth(3.5%)を用いた。回分培養中
の菌体量、溶存酸素濃度、発光度(発光細菌の場合のみ)を経時的に測定した。
純酸素を用いた大腸菌の微細気泡と粗大気泡の培養比較実験では、振とう培養、粗大気
泡培養に比べ微細気泡培養のみ大腸菌が増殖した結果が得られた。増殖した可能性として
、同程度の溶存酸素の条件であったことから微細気泡が大腸菌に活性を与え、毒性のある
活性酸素の分解を促したと考えられた。発光細菌を用いた微細気泡と粗大気泡の培養比較
実験では、微細気泡培養では粗大気泡培養と比べて発光細菌の菌体量は同程度にもかかわ
らず、微細気泡培養での発光度は低かった。よって、クオラムセンシングを阻害する可能
性があると考えられた。以上のことから、微細気泡による培養はバクテリアの集団行動を
制御し、個(一細胞)としての能力を高める可能性が示唆された。
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