PI-155:亜酸化窒素還元細菌をターゲットとする集積培養装置から単離されたDechloromonas sp.とAzospira sp.の亜酸化窒素還元活性
1東京農工大学大学院 工学府, 2産業技術総合研究所
N2OをN2に還元する経路は脱窒反応の最終段階であるN2O還元反応のみと言われており、この反応を担うN2O還元細菌を利用したN2O放出抑制技術への応用が期待される。本研究では高活性なN2O還元細菌の獲得を目指し、集積培養装置(Gas-Permeable Membrane Device (GPMD))を開発し、活性汚泥に生息するN2O還元細菌の集積、単離を試みた。GPMDは中空糸ガス透過膜が内封されておりN2Oをバブルレスで供給、嫌気状態で連続培養、バイオフィルムとして集積バイオマスを回収可能といった利点がある。191日の集積培養期間で微生物群集構造解析、N2O還元機能遺伝子(nosZ)の定量を行ったところ、nosZ cladeIIの機能遺伝子を有する細菌群がGPMDにおいて優占化し、Rhodocyclaceae科が30−60%の割合で優占化した。集積された汚泥から単離を試みたところ、優占種と近縁なRhodocyclaseae科のDechloromonas sp.やAzospira sp.が高確率で単離されnosZ cladeIIの機能遺伝子を有していることが明らかとなった。次に、微小電極を用いたN2O消費試験により、単離株のN2Oに対する活性をMichaelis-Menten式にフィッティングすることで評価した。Dechloromonas sp.とAzospira sp.の最大N2O消費速度は、1.89±0.47×10-2,1.82±0.25×10-2pmol/h/cellであり、Bradyrhizobium japonicum (8.5 ×10-5pmol/h/cell)(Itakura et al., 2008, Appl. Environ. Microbiol.)と比較して約200倍高い値を示した。一方、半飽和定数はそれぞれ2.04±0.13, 2.10±0.26 _Mであり、一般的な脱窒細菌であるPseudomonas denitrificans (30-60 _M)やParacoccus denitrificans (5 _M)の値(Betlach & Tiedje, 1981, Appl. Environ. Microbiol.)と比較して低い値であり、N2Oに対して高い親和性を示した。
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