PI-146:異なるプラスミドが宿主に与えるコストの評価
1静大院・総合科技・工, 2静大,グリーン研
【目的】プラスミドは種々の微生物間を接合伝達によって伝播可能な遺伝子の運び手であり,微生物の急速な進化・適応に寄与する.プラスミドがどのような微生物に,どの程度の頻度で伝播するのか,またその宿主にどの程度の負荷を与えるのかという情報は,微生物生態を理解する上で重要である.我々は,IncP-1群に属するプラスミドpBP136の伝播可能な宿主の種類や伝達頻度を比較してきた.その過程で同一の菌株Pseudomonas putida mt-2株に由来する,PpY101株およびKT2440株が,同一のプラスミドをもつにもかかわらず,プラスミドを持つことで受ける負荷の大きさが異なる現象を見出した.本研究では,プラスミドと宿主の関係をより深く理解することを目的に,これら2株の違いをもたらす原因について調べた.
【方法】プラスミドは,pBP136の他に,pCAR1,NAH7の3種類を用い,宿主としてはKT2440株とPpY101株を用いた.これら2株に対する伝達頻度の比較は,KT2440株の派生株であるSMDBS株を供与菌とし,2株を受容菌とした.また,プラスミドが宿主に与える負荷を評価するため,competition assayを行った.各々のプラスミド保持・非保持菌株を,それぞれ同量になるように混合・接種して,24 hごとに新鮮な3 mLのLB液体培地に3回継代した.各継代の際に,選択マーカーを含まない1/3希釈LB固体培地上で,プラスミド保持・非保持菌株のコロニー数を計測して,比較した.
【結果と考察】KT2440株とPpY101株を受容菌とした際の伝達頻度は,NAH7以外で有意差があり,PpY101株とKT2440株ではKT2440株の方が有意に高い結果となった(t 検定).またcompetition assayの結果,pBP136とpCAR1に関しては,PpY101株を宿主とした場合,プラスミド保持株が優占化したのに対し,KT2440株を宿主とした場合には非保持株が優占化した.一方,NAH7は,KT2440株・PpY101株ともにプラスミド保持株・非保持株が拮抗する結果となった.これら2つの菌株のゲノム配列を解読し,比較したところ,いくつかの違いが認められた.現在,その違いについて検証をするとともに,それぞれを供与菌とした場合の伝達頻度を比較しているところである.
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